てさぐりな旅

プロローグ

この国には未来がある。そう思った…砂埃立ちこめる道路を稲妻のように走るトゥクトゥクに乗り思いを馳せた。
「さらば青春、さらば悪魔の頃の私の抜け殻」

1.過去そして

2016年は最高の年だった。ここ数年マイナスが多すぎてゼロにすらならない人生だった。地べたを這いずり回って生きていた。日陰を歩いていた足下に一筋の光明を見た2016年。その最後を締めくくるカンボジア旅行。
26歳の誕生日をこの国で迎えることができて幸せだったと今にして思う。私は26という数字がますます好きになった。

2.小銭を数える

1ドルの価値をこれほどまでに実感した旅はないと思う。ゴミ拾いの少女は歓楽街の遊女を羨望の眼差しで見つめる。私は「大人になるまで生きてくれ」と星に願った。大人になるころまでにこの国は発展しているはずだ。道はいくらでもできていく。私はこの国の未来を見届けていきたい、そう思った。

3.プノンペン135st

トゥクトゥクのドライバーはボッタくることに真剣だ。彼らは日々2ドル以内で生きている。私たちよりも必死さ…この国には観光業で持ってるようなもんだからだ。

幸福とは何か?それを考えさせられる旅でもあった。彼らにあって私にないもの…それを痛感した。何かはここでは控えておこう。

4.終章

ケッペンの気候区分ではこの国はAw(サバナ気候)つまり熱帯で冬期乾燥、最高の時期に旅行したことになる。トゥクトゥクに乗っているのが心地よかった。風は汗をかいた男達に安らぎを与え夜の街へと誘う追い風となる。このまま天国まで乗せて行ってくれと思うほど私は心酔した。 リアルを知りたいならアンコールワットよりもプノンペン、この言葉を何度口にしただろうか…また行きたい。当時の足跡を探して

 

エピローグ

 

「ゴトンゴトン…」トゥクトゥクに乗りプノンペン空港に向かう二人の青年。何とも形容し難い思いを胸にこの国を発つ。

その時突風が二人を襲った。

「あっ…」振り返った瞬間私の帽子が天高く舞いカンボジアの町に消えていった。帽子はヒラヒラと美しい弧を描いていた。私達の新たなる門出を祝っているのかこの地に留まることを求めているのか…青年は振り返るのをやめ、新たなる希望を胸に日本を目指した。


追伸
この旅行並びに私を芸術たらしめてくれたE氏に感謝したい。ありがとう。あと、1000回くらい現地で話題にあがったT.S君には感謝しない。